真面目な話を喜ぶ男性もいるようです。

朝7時のメッセージ

暇を持て余していた大学時代、私はメールメディでアルバイトをしていた。
動機は単純、楽で稼げそうだったから。ちょっとHなこともあったりして?なんていう
スリルを楽しむ悪戯心のようなものもあった。

 

実際に仕事が始まってみると、来るメッセージはみんな定型文から
選んでいるのか?と思わせるほど似たり寄ったり。

 

「絡んで☆」なんていうチャラ男系から「もしお時間あれば返信いただければと思います」という真面目男子など
キャラクターは様々でも、少し会話が弾めばおっぱいの大きさ、パンツの色、経験人数という通過駅を越えて
そして一発どうですかという終点へたどり着く。

 

そんな男の欲望電車をのらりくらりとかわすのにも少し飽きてきた頃、一件の風変わりなメッセージが目に留まった。
「金も名誉も無い男ですが」。そんなタイトルで、ハンドルネームは勇(いさみ)。

 

本文はなんと年齢が90歳近いこと、パソコン歴2年、そして暇つぶしと思って返信くださいという
とてもシンプルな内容だった。年齢は嘘かもしれない、でもなんとなく他のメッセージとは違う面白さを感じて、
簡単な自己紹介と「よろしくお願いします」一言添えて返信した。

 

勇さんから返事が来たのは翌日の朝7時。
時間帯にとまどいつつも、とても喜んでくれているようで少し嬉しくなった。
考えてみると、この仕事で嬉しさを感じたのは初めてだったかもしれない。

 

それから勇さんとのやりとりが始まった。
内容は主に、勇さんが気になった新聞記事について。ジャンルは社会面からスポーツまで様々。
アダルト色は一切無かった。

メッセージが来るのは決まって朝7時。
私は早起きをするようになり、大学に遅刻しなくなった。

 

新聞は読まなかったけど、社会のことに少し詳しくなった。
そんな日々が一カ月ほど続いて、ある日ぷつんと勇さんからのメッセージは途絶えた。

 

一度だけこちらからメッセージを送ったけど、返事は無かった。
理由は分からない。顔も本名も知らない私に、事情を知る術は無い。
飽きたのかな、パソコンが壊れたかも、まさか病気?
初めて、画面の向こうにいる人のことが気になった。

 

それからしばらくしてメールレディはやめてしまったけど
今でも時々、朝7時にメッセージが届く着信音が聞こえる気がする。